この記事シリーズはタイで生産管理システム、販売管理システム、在庫管理システム、原価管理システム、ERPなどのいわゆる基幹業務システムを構築する際に留意すべきことを筆者の経験を踏まえてお話していきます。

第5回:在庫台帳(Stock Card)について

第1回から第4回までは、在庫管理をする上での前提知識的なお話をしてまいりました。本日は、これまで度々取り上げたStock Cardにまつわるお話をいたします。これもタイで操業される製造業、商社には必須の知識となろうかと思われます。

Stock Cardとは?

タイでは在庫台帳もしくは在庫受払台帳のことをStock Cardと呼ぶのが一般的です。タイで操業する会社は会社登記が完了したら必ずVAT登録を行い、各会社にTAX IDと呼ばれる一意の識別番号を当局に発行してもらわねばなりません。また入出金が絡むInvoiceなどの書類には必ずTAX IDを明記することが慣習となっております。

VAT登録をした事業者、物品を購入し在庫を持つ事業形態の会社は実際のトランザクションから3営業日以内に在庫受払台帳を記帳することが義務付けられているようです。また、税務署の監査が入ったときには即座にこの在庫受払台帳を提示できる状態にしておかないといけないようです。税務署が要求する在庫受払台帳のことをStock Cardと呼んでいるようです。

Stock Cardの内容

Stock Cardに記載する内容は数量だけでなくVATという税金が絡む以上金額情報も記載することも必須です。輸入であれば通貨、為替レートも記載しなければなりません。さらに在庫評価に仕入諸掛や輸入関税も含めるのであればそれらも明記しなければなりません。

それだけでなく、仕入先からのInvoice番号、そのInvoiceの元となったPO番号、販売したのであれば顧客へ送付したInvoice番号、そのInvoice発行の元となった注文番号など会計監査人からはいろいろな要求がされることになろうかと思います。

さらに製造に使われた部品や材料は、どの最終完成品のために使われたのか、製造指示番号などの情報も管理すべき情報となってきます。これらの情報は原価管理やBOI管理に必要になってくるからです。

Stock Cardの内容は、恐らく数だけしか日々記帳していないであろう日本の在庫台帳、在庫受払台帳に比べるとかなり細かい内容ではないでしょうか。

Stock Cardを記帳するのは通常タイ人のローカルスタッフの仕事となるため、日本人の管理者の方で特に前任者から業務を引き継いだ方はご存知でない方もいらっしゃるかもしれませんが、この記帳業務だけでもローカルスタッフは多大な工数を割いていることは想像に難くありません。

在庫評価方法(原価法)について

Stock Cardにはもう1つ留意すべき重要なことがあります。それは、在庫評価方法もしくは原価法と呼ばれる記帳ルールです。タイでは取得価格に基づく移動平均法、総平均法、先入先出法(FIFO)が許可されており、後入先出法(LIFO)は許可されていない、ということをどこかで聞いたような気がしますが、現実的には筆者の経験上、タイの99%の会社は移動平均法か先入先出法(FIFO)の二者択一という感がいたします。

先入先出法はロット管理のことか?

先入先出法はロット管理で実際の出庫処理で先に入庫されたものから順に出庫すればシステムでサポートできます、というような説明をされているシステムエンジニアがいらっしゃいますが、筆者に言わせますとそれは大変大きな勘違いです。

もちろん現実の在庫の出庫処理オペレーションが先入先出になっているべきでしょうし、多くの会社がそのようなオペレーションを志向しているようですが、実際のオペレーションで確実に先入先出を実現するにはERPからバーコード付き、棚番情報付きのPicking Listが出力され、倉庫スタッフはハンディーターミナルやタブレットからPicking情報を入力する、といったしくみがなければ現実的に実現不可能ではないかと思います。

Stock Cardに求められている先入先出法とは、あくまでもコンピュータ上で計算される仮想のもの、という認識でかまわないと思われます。

なお、弊社のEXEX生産管理システム、EXEX販売管理システムも当然ながら先入先出法を標準機能として実装されておりますが、在庫評価で先入先出をする場合コンピュータで自動的に一意のロット番号を付番しています。このロット番号は前述の通り、コンピュータ上で計算される仮想のものと考えております。

廉価な会計システムでできるStock Cardの問題点

上述のようにタイではStock Cardは非常に重要な管理帳票であるため、タイ国内のかなり廉価な会計パッケージも標準でStock Cardをサポートしています。
かなり廉価な会計システムでサポートできているなら、それで問題なし、と早合点される方もいらっしゃるかもしれませんが、実は大きな問題があります。会計システムは基本的には財務諸表を集計するためのシステムで、仕入や出荷や製造現場への払出しを管理するためのシステムではありません。つまり、廉価な会計システムからStock Cardを出力するためには、Stock Cardを出力するためのデータを一生懸命に入力しなければならないのです。

第1回の記事で筆者が主張したことを改めて書かせていただきます。

在庫管理を実現するには、在庫管理をやるのではなく
・受注
・出荷
・購買
・生産進捗管理
をコンピュータを活用して行うことにより、結果的・必然的にコンピュータで在庫管理ができてしまう、というのがあるべき在庫管理の姿ではないかと思います。

なお、弊社のEXEX生産管理システム、EXEX販売管理システムはMRPなどで作成される発注指示、出荷指示、払出指示に従い実績を登録すれば、結果的に瞬時に移動平均法、総平均法、先入先出法(FIFO)によるStock Cardが出力されます。