この記事シリーズはタイで生産管理システム、販売管理システム、在庫管理システム、原価管理システム、ERPなどのいわゆる基幹業務システムを構築する際に留意すべきことを筆者の経験を踏まえてお話していきます。

第8回:MRPについて

前回記事で、生産管理においては適正在庫を実現することが抜き差しならぬ重要な課題であることをお話しましたが、適正在庫実現のための生産管理システムにおける1つの中核的な機能であるMRP(Material Requirements Planning、 資材所要量計画)についてお話します。

MRPとは(用語解説)

MRPとは1960年代にアメリカの経営工学分野で考案された製造業における資材発注方法論で、正しくはMaterial Requirements Planningと呼ばれ、日本語での正式名称は資材所要量計画と呼ばれています。
正式名称があるくらいに、生産管理分野においては今日では極めて一般的な手法となっていますので、IT用語辞典(e Words)での解説を引用します。

1960年代に考案された生産管理手法の一つ。企業の生産計画達成を前提に、部品表と在庫情報から発注すべき資源の量と発注時期を割り出すもの。過去の使用分を補充するのではなく、予想される需要を事前に捕らえることにより、在庫の圧縮と不足の解消を同時に実現した。資材の調達を顧客からの受注と需要予測に直結させた結果、生産計画作業は大きく改善できた。

多くの方にとっては、上記説明では具体的なイメージが湧かないかと思われますので、以下筆者がもう少し具体的な解説を致します。

MRP計算のメインは手配数とリードタイム(納期)

MRP概要

1.リードタイム(製造日数や発注日数)計算

図のように、受注もしくは生産計画データから完成品の出荷日から逆算して前工程の納期を計算していきます。(バックワード方式で前工程の納期と着手日を計算する)

なお、受注もしくは生産計画データのことを独立需要品目と言い、リードタイム計算はローレベルコードが最も低いもの(=部品表の階層構造上最も高いもの)から計算しなければならず、展開計算はローレベルコードごとにレベル・バイ・レベルで行うなどとMRP用語では言いますが、プログラマー以外は気にする必要のない概念です。

なお、MRPにおいてはリードタイムは固定で計算されるのが基本です。
数量に応じてリードタイムは変わるように設定できるMRPもありますが、弊社の扱っているEXEX生産管理システムではMRPにおいてはリードタイムは固定としていますし、同様の仕様のMRPが主流かと思われます。

この点については賛否あろうかと思いますが、筆者が思うに、
・MRPではそもそも製造日程は細かく計算はできない
・製造日程を計算するのは固有の資源(機械)に割り付けて初めて可能
・割付方によっては製造日程はかなり変動するので、生産数に応じてMRPでリードタイムを変動させても、あまり意味がない

と考えております。

つまり、資源という概念を用いないでリードタイム計算をするMRPには、こと日程計算に関しては、過剰な期待はすべきではない、というのが筆者の見解になります。

2.手配数量計算

筆者は、MRPにおけるリードタイム計算はあくまでも標準的な目安程度のものという捉え方をしていますが、MRPの手配数量計算は高い精度を期待できると考えています。
MRPの手配数量計算には、受注数や生産計画数だけでなく
・安全在庫
・歩留まり率
・親1個に対する子の必要数量
・期間まとめにする(ある一定期間に必要なものを1度に手配してしまう)
などのオプション機能があるのが普通です。弊社の扱っているEXEX生産管理システムも上記オプションが使えます。

さらに上記で計算された必要数(所要量)に対して、すでにある在庫もしくはまだ在庫にはなっていないが在庫になる予定(発注残)から使いまわしができるかどうか(=引当可能かどうか)も計算した上で、正味所要量が求められます。

最後に正味所要量に対して
・丸め数量(ロット単位数量)
・最小発注数量
を考慮して、手配数が決まります。

3.負荷計算

EXEX生産管理システムでは、MRPで負荷計算まで行っています。EXEX生産管理システムにはBOMと紐づけて資源情報や工数情報まで持たせているため負荷計算が可能になりますが、一般的な生産管理システムにはBOMに資源情報や工程情報までは持っていないことが多いように思われます。したがって、負荷計算は世の中の全ての生産管理システムで行っていることではありません。

MRPの限界

MRPの日程計算がきれいにはまる業種は限られているものと筆者は考えています。

山崩し

特にMRPでは日程は無限山積みといわれる方法、つまり資源の能力を考慮せずに納期だけを考慮して日程を作成するためにある日の稼働率が300%などという結果になることはよくあることです。
この問題を解決するために山崩しといわれる機能が必要になります。
山崩しの実装方法は各社製品によりまちまちで一般論は筆者には言えません。
ただ1つ言えることは、非常に細かい、精度の高い山崩しが必要ならば、MRPの理論から生まれた山崩しをするよりも、最初から計画を特定の資源に割り付けていくAPS(Advanced Planning and Scheduling)の機能を使った方が精度の高い結果が期待できると筆者は考えております。
弊社がサポートしているASPROVAは山崩しも含めたスケジューリングにおいて高い信頼性が実証されている製品となります。

バケットの大きさ

MRPでは日程を計算する際の単位をバケットサイズと呼んでいます。バケットとはバケツのことで、計画を割り当てる際にバケツにものを入れていくイメージからこの言葉が使われるようになったものと筆者は想像します。
1960年代にMRPが登場したころは、コンピュータで使えるメモリが非常に少なく細かすぎる計算はできなかったようでバケットサイズは1週間が普通だったようです。その後半導体の進化とともにバケットサイズはどんどん小さくなってきましたが、それでも現時点でバケットサイズは1日としているMRPがほとんどではないかと思います。MRPの日程計算では開始時刻や終了時刻までは分からないという訳です。

MRPを補完するスケジューラー

上記のMRPの欠点を補完するために、スケジューラー、APSと呼ばれるソフトウェアがあります。先にご紹介したASPROVAは日本におけるスケジューラーの代表的な製品となります。
弊社が提供するEXEX生産管理システムをご利用のお客様には
・EXEXの山崩し機能
・EXEX生産管理とASPROVA連携させて具体的な資源割付計画を作成する
のようにご要望に応じて段階を踏んだご利用を推奨しております。