この記事シリーズはタイで生産管理システム、販売管理システム、在庫管理システム、原価管理システムなどのいわゆる基幹業務システムを構築する際に留意すべきことを筆者の経験を踏まえてお話していきます。

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第19回:タイ・ベトナムでロットトレーサビリティを実現するために必要なこと(1)

ここ数年、製造業ではロットトレーサビリティの重要性が日に日に増しているということを様々な商談で感じております。

あくまでも筆者の感覚でしかありませんが、ロットトレーサビリティの重要性が高まっていることと、新聞・ニュースを賑わした社会問題とはある程度相関関係があるのではないかと感じられます。

今を遡ること10年以上前になるでしょうが、日本国内でトラックのタイヤが脱輪して、通行人に飛んできたタイヤが衝突して死亡するという事件がありました。

数年前には、日系大手自動車メーカーの社長がリコール問題でアメリカの国会で喚問されたということが話題になりました。

ほんの1-2年前には、エアバッグメーカーがアメリカで大規模リコールを受けたことが大々的に報道されています。

これらの事件がある度に、業界ではロットトレーサビリティを叫ぶ声のボリュームが大きくなっているように感じられるのです。

ロットトレーサビリティに当初非常にシビアだったのは、自動車部品、航空機部品など人命に直結するようなものを作っている業界という認識がありましたが、筆者の最近の商談では例えばプリンター部品などを作っている会社でもロットトレーサビリティに非常にシビアになっていらっしゃいました。

筆者はERP関連製品を扱っているという職業柄、商談ではもっぱらシステム/ソフトウェアの機能にご質問が集中する傾向がありますが、その後の運用状況を見ていくと、特にタイ・ベトナムなどの東南アジアの発展途上国では、ソフトウェアの機能や使い勝手以上に現地法人社長様、工場長様が留意すべき点があるように思われます。

率直に申し上げますと、タイ・ベトナムの製造業では、日本人管理者によるシステム導入の検証段階では、「このソフトでロット管理はいける」とご判断されても、タイ人・ベトナム人が主体となる現実の運用段階で躓いてしまうケースが非常に多いのです。

ところで、筆者はタイのチョンブリ・ラヨン地区の日系製造業様の生産性を上げることを目的に開催されているシラチャ生産性向上委員会というアクティビティに参加しております。
シラチャ生産性向上委員会は、特定非営利活動法人日本ファシリテーション協会前会長の田頭篤氏のファシリテーションの下、チョンブリ・ラヨン地区の日系製造業のMD様などが集まり、一方通行のセミナー形式ではなく、ディスカッションを通して問題解決策をご参加者自らに気づいて頂くことを目的とした活動です。

先日のシラチャ生産性向上委員会のテーマは「タイ人との上手な付き合い方を探る」でした。

ここでご参加者の複数のMD様から以下のようなタイ人従業員の実態が挙げられました。

・目先のことしか考えない(長期的に考えない)
・決めたルールをすぐ破る、やらなくなる
・夜勤で必ず誰か寝ている(起こす人もいる、守衛は黙っている)
・手を抜くことをまず考える人がいる(楽な方に流れる) → 嘘をつく → 後で問題になる
・問題が起こっても解決しない → その場しのぎ
・管理手法・対応方法を知らない、経験がない、問題意識がない

こう書き連ねていくと、タイ人の悪口ばかりになってしまいそうですが、そういう意図はございません。しかし、日本人にとっての「必要なこと」とタイ人にとっての「必要なこと」の認識の間には大きなギャップがあることは確かなようです。

ロットトレーサビリティ実現のためには、どんなに便利なソフトウェアを使っても、管理項目が細かくなり、工場現場のワーカーさんにとっては今までやらなくてもよかった煩いルールが一気に増えてしまうことは否めません。

厳しい経済環境を理解している日本人は、競争力を上げるためには煩わしくとも必要だと認識されていらっしゃるのですが、世界経済の中で自社が置かれている立場までは踏み込んで考えない傾向にあるタイ人には、どうしても「面倒くさい、だからやらない」という発想になりがちであることが、このシラチャ生産性向上委員会のディスカッションから見えてきたと筆者は感じたのです。