この記事シリーズはタイで生産管理システム、販売管理システム、在庫管理システム、原価管理システムなどのいわゆる基幹業務システムを構築する際に留意すべきことを筆者の経験を踏まえてお話していきます。

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第21回:生産管理システムのMRPとスケジューラーの違い

営業活動中に生産スケジューラーとERP/生産管理システムにある計画機能(MRP)の違いについて度々質問されるので、違いをまとめてみました。

生産管理システムの中ではMRPは中核機能とも言えます。
そのため、これまで生産管理システムのMRPを使ったことのない方は、MRPは何でも計算してくれると思われていらっしゃる方が少なくないようですが、MRPの機能には限界があるというお話です。

思いつくままにMRPと生産スケジューラーの違いを列挙してみます。

MRPは所要量計算がメイン

所要量計算とは最終完成品を作るに当たり、必要な部品・材料・中間品の数量を計算することです。
この計算に必要な情報が、BOMであり、現在庫数であり、既に発注済の未着部品・材料オーダーなどです。
ここで必要なBOMは、製品1個作るのに何が(部品・材料・中間品)何個必要かという情報です。
1つの工程でどの設備を1個当たり何分使うといった工程情報は、MRPでは使われません。

対して生産スケジューラーでは、所要量計算も計画もどちらも計算できます。

生産管理システムのMRPでは工程ごと日単位のメッシュでしか計画を組めない

生産管理システムのMRPでも、所要量計算だけでなく、不完全ながら生産計画も計算できます。
筆者は全ての生産管理システムを知っているわけではありませんが、見聞したほとんどの生産管理システムでは日程作成の単位は日単位です。
つまり、1工程目が13時に終わるので、13時以降に2工程目に着手できる、といった1日の中での時間・分単位での計画は作れません。

対して生産スケジューラーでは、分単位・秒単位での生産計画が作成できます。

生産管理システムのMRPではバックワード方式でしか計画を組めない

MRPでは、登録された最終完成品の納期から逆算して前工程の着手日、完了日を計算していきます。
バックワード方式とは納期逆算のことです。
しかし、工場によっては空いている時間に先々に必要なものを前倒しで作っておきたいということもあるかもしれません。前倒しで作ってしまうことをフォワード方式と呼びます。

MRPでは、バックワード方式でしか計画を作れませんが、生産スケジューラーではどちらの方式でも計画を作れます。
さらに、生産スケジューラーでは、例えば、
・品番ごとにバックワード/フォワードを変える
・ある設備を通過する品番だけはバックワード、それ以外はフォワード
・バックワードで計算してみて、非稼働稼働時間があるなら前にずらす
などなど、ロジックのチューニングにより様々なパターンで計画を作ることができます。

生産管理システムのMRPではリソースの空き状況を考慮しない

MRPでは納期から逆算して生産日程を作りますが、このとき同じ納期に集中していると特定の日だけに生産が集中してしまうような計画を作ってしまうことがあります。

対して生産スケジューラーでは、最終完成品のオーダーを工程ごとばらした上で(この単位を作業と呼ぶ)、作業ごとに利用可能な設備に予約していくというロジックのため、特定の日に生産が集中するということは起こりません。

生産管理システムのMRPでは段取り替えを考慮しない

筆者は全ての生産管理システムを知っているわけではありませんが、見聞したほとんどの生産管理システムでは生産計画のなかに段取りが盛り込まれるしくみはありません。
段取り替えも、前後に何を作っていたかによって、必要な段取り作業が変わることがあるため、ここにも条件分岐ロジックが発生します。

対して生産スケジューラーでは、よほど特殊な条件でない限り、段取り作業を考慮した生産計画を作ります。

生産管理システムのMRPではリソースごとのカレンダーを持てない

リソースとは生産設備、機械、治具、金型、作業員などのことです。
工場では、ボトルネックとなっている工程(設備)だけは長時間残業や休日出勤するなどで対応することがありますが、一般的にMRPでは「この工程だけは休日出勤する」などは考慮できません。

対して生産スケジューラーでは、設備ごとに時間単位で稼働時間や作業員数を設定でき、これを考慮した計画を作ることができます。

生産管理システムのMRPでは工程ごとに計画ロジックを変えられない

これはちょっと説明が難しいため、例を出しながらお話します。

例1)バッチ処理
ある工程は1回のバッチ処理でできるだけ多くの個数を処理したいため、前工程から一定数が流れてくるまで待つ。

例2)塗装処理
塗装では色の薄い順に一日の中で白→青→赤→黒の順番でやりたい。
この順番でやらないと、前段取り、後のクリーニング処理が非効率になってしまう。

例3)ボトルネック設備
ボトルネック設備だけは段取り時間が最小になるように、向こう3日分の作業内で同一品目をグループ化してまとめて処理したいが、その他の設備では納期の早い物順に処理していく。

などなど、特定の工程によっては特殊な条件があることがあります。

一般的にMRPでは、工場内の全品目・全工程に対して同じロジックを適用するため、この工程だけはロジックを変えるということはできません。

対して生産スケジューラーでは、よほど特殊な条件でない限り、工程ごとに計画ロジックの条件を変えることができます。
まだまだ、たくさんありますが、主要な違いで思いつくのは以上となります。